技術開発、製品開発、そしてデザイン
技術開発、製品開発、デザインという3つのキーワードについて、自分なりに整理したいと思います。
1. 技術開発
私は大学で研究に携わる立場の人間ですが、大学と企業の間では技術開発と一口に言っても基礎研究と応用研究があるので、個々人のバックグラウンドによって言葉の捉え方が違うような気がします。しかし、共通しているのは、技術開発の段階では開発された技術がどのような価値を持つかということについてはあまり深く議論されません。もちろん開発の前提として意識はするのですが、非常に浅い議論のまま本題の技術開発における論点に移ってしまいます。「技術屋は視野が狭い」とか「ビジネスがわかっていない」と言われてしまうのはこのためでしょう。個人のキャリアとしては視野がせまいままでは限界があるかもしれませんが、全体の活動の中で技術がどのような価値を社会にもたらすかを考えるのは製品開発及びデザイン担当の人なので、技術開発専門のメンバーに最終的な価値まで考えろというのはナンセンスだと考えます。
2. 製品開発
私のイメージでは、技術開発とデザインの間を結ぶ人です。鍵となるテクノロジーをベースに、価値を具現化するための製品(プロトタイプ)を開発します。この段階で、自社の高い技術力に酔い、市場との対話を通してデザインをしてこなかったのが2000年代の日本電機メーカーの敗因というのはもはやコンセンサスです。技術開発側と深い議論をするための高い専門性と、技術に偏り過ぎないバランス感覚が求められます。
3. デザイン
デザインとは市場との対話です。ターゲットとなる顧客と製品の仕様シーンを限りなく具体的にイメージし、最大限の価値を発揮するための最適な製品を設計します。顧客とのコミュニケーション力、また、顧客の言動から深く埋もれた真のニーズを引き出すための鋭い洞察力と想像力が必要となります。製品の存在意義を設計するのがデザインの仕事となります。
以上、3つについて自分の頭の整理ために簡単にまとめてみました。一人で全てをこなすということは現実的にはないかもしれませんが、常に3つすべてのプロセスを頭に入れながら、すべての立場の人とコミュニケーションをとって開発を進めることが重要ではないかと思います。
これからの生き方
夢、幸福、生き方について、北野武さんが独特の視点で鋭く語っておられます。
私はこれまで、志こそが人生を豊かにする最も大事なものだと思ってきました。
志(すなわち夢、目標とも言い換えられる)こそが人生に目的を与え、日常生活にハリを与え、生活にハリがあるから余暇も楽しくなると。毎日が日曜日では最初は良いかもしれませんが、面白くありませんし、退屈ですぐに飽きてしまうでしょう。仕事が終わり緊張から解き放たれた直後の、大切な人たちと飲むお酒がこの世で一番美味しいのです。
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記事の中で、北野武さんは
" 夢を追いかけるといえば聞こえはいいけれど、それはつまり輝ける明日のために今日を犠牲にするということだ。ほんとうのことをいえば、人も羨むその「輝ける明日」なんてものは、いつまで経ってもやってこないというのに。"
とおっしゃっています。身も蓋もありませんがその通りでしょう。描いた夢が実現するのはほんの語句一握りの人間で、圧倒的大多数は人知れず散っていくのでしょう。
また、
"人がほんとうに生きられるのは、今という時間しかない。その今を、10年後だか20年後だかの明日のために使ってどうしようというんだろう。"
という疑問を提起されており、「清く貧しく美しく」その日その日を生きていくということを語られております。北野武さんは、これからの日本のあり方を提示されているのだと感じました。
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一方で、すべての国民が「清く貧しく美しく」生きていたのでは、国家としては保たれません。経済活動が活発に行われなければ税収が国に入らず、社会福祉を充実させることができませんし、雇用が生まれず一般市民の収入は減少し、「貧しく」の部分が度を越してしまいます。
これからの社会は、大多数の「清く貧しく美しく」の層と、ごく一部の「自ら志を持ち勝手に走り出す」層の2つに大別されていくのではないかと思います。
色々な生き方があり、価値観は人それぞれです。まずそれを認識していることが重要です。
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いろいろな人と交わり世の中を広く知り、興味のあることはより深く調べ、そこから現状に対しての自分なりの違和感が生じてくると思います。
「世の中もっとこうなったほうが良いんじゃないか」「もっとこうあるべきじゃないのか。こうなったらいいのに。」という感情が志の種だと思います。
そして、それを見つけられさえすれば、私としては人生大成功だと思います。
後は勝手に走り出しますから。
シャープの「自社製品購買運動」
シャープが自社製品の購入を社員に促す取り組みをするそうですね。役員は20万、管理職10万、そして一般社員は5万円の購入を目標として設定されているそうです。
なんとも不格好な話だなと思いました。この取組で一時的に売上高が上がったからといって一体何になるのでしょうか。手段を選んでいる場合ではない状況なのでしょうが、これでは何の解決も図れません。市場からの反応を数字からきちんと読み取り、次の商品開発や販売戦略を考えるのが企業の基本なのではないでしょうか。
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また、現場の社員の方々には、変なノルマなど課されなくても自ずから購入したくなる製品の開発に尽力していただきたいです。上からの開発方針や社内のしがらみなど、ハードルはたくさんあるでしょうが、アンダーグラウンドで進めるなど、個々の熱意が新しい製品を生むと思います。そして、それこそが唯一の復活の道でしょう。
シャープの経営陣の方々に対しても、復活を信じて、ぜひ長期的な舵取りを期待したいです。